最近、人口に関するお客様とのやりとりがあり、オーストラリアの人口統計の取り方について説明いたしました。疑問をお持ちの方もいらっしゃると思うのでその内容をブログにしました。
日本では、戸籍や住民票といった公的書類をベースに、行政がほぼリアルタイムで正確な人口を把握していると思います。引っ越しの際も「転出・転入届」を出すことで、自治体ごとの人口変動も即時に反映されます。
一方、豪州には戸籍や住民票制度がありません。出生証明などは存在するものの、引っ越しの届け出義務がなく、州や市レベルで「実際に何人住んでいるか」を把握するのが難しい仕組みです。
そのため、基本的には5年ごとの国勢調査(Census)をもとに人口を確認しています。さらに、税務番号(TFN)や医療保険(Medicare)、福祉関連の登録情報、移民出入国記録などを組み合わせ、可能な限り実態に近づけています。
ビジネスの世界では、企業やコンサルタントがこうした調査結果をもとに市場分析を行いますが、調査データの更新頻度が低いため、特に4年目以降は「劣化データ」に頼らざるを得ない局面もあります。
だ、豪州特有の傾向として、都市部や地方都市を問わず、ほとんどの地域で人口が増加している点が挙げられます。たとえば不動産においては、現在は人が少ない地域でも、5年後には人口が伸びて資産価値が上昇しているケースも珍しくありません。
つまり、オーストラリアでは「人口統計=推定に基づく仮説」として柔軟に捉え、他の情報と組み合わせながら判断していくことが肝要です。制度としての正確性は日本ほど高くないものの、ほとんどの地域で人口が増加しているという前提は、投資判断において大きなアドバンテージにもなり得ます。
一方で、日本では人口減少という現実が避けられず、エリアによっては将来的な資産価値の下落リスクも視野に入れる必要があります。


