差押物件は安く買えるので、そのような物件を紹介してくれませんか?というお問い合わせを頂くことがあります。日本とか米国では差し押さえ物件は市場価格より、かなり安く、場合によっては破格で購入できるということのようです。私は日本と米国の仕組みがよくわかりませんが、豪州ではどうでしょうか?
「差押物件」とは簡単に言いますと、ローンを支払えなくなった人(つまり債務不履行の状態)の物件を銀行が抵当権で確保(つまり差押)している物件です。その物件を売却して、未払いのローンや利息を回収する訳ですが、その物件を売却する際に、一つはフォークロージャー(Foreclosure)、もう一つはExercise Of the poer of sale(エクササイズ オブ パワー オブ セール) という二つの方法が一般的にとられます。日本の投資家の方がいう差押物件とは往々にして、フォークロージャーを指しているように思います。オーストラリアではエクササイズ オブ パワー オブ セールが大半を占めています。二つとも債権者(つまり銀行)主導で売却がされる訳ですが、決定的な違いがあります。それは、フォークロージャーは、物件の所有権が銀行に「移転」して売られること、そして、エクササイズ オブ パワー オブ セールは、所有権は借りている人が持ったまま売却されることです。もう少し掘り下げると、フォークロージャーは、仮に貸付金が全額回収できなくても借主にはお咎めなし、一方、エクササイズ オブ パワー オブ セールは貸付金が全額回収できない場合には借主にその差額を請求するという仕組みです(業界では前者はノンリコースローンで後者リコースローンと言います)。さらに掘り下げると、売る側の責任も異なってきます。フォークロージャーの場合は銀行次第ですが(資金が早く回収できれば良い)、エクササイズ オブ パワー オブ セールは「適正な市場価格」で売却することが法律で義務付けられています。何故かと言いますと、銀行が単に資金回収のために物件を安く売るということは、借主にその負担が跳ね返ってくるからです。そこを法律で保護している訳です。ということで、説明が長くなりましたが、豪州では差押物件が市場価格より、かなり安く買える、破格で買える、ということは、かなり稀なケースかと思います。勿論、景気と市場が悪いとき差押物件をかなり安く購入できるケースは見てきましたが、米国のように景気の動向で差し押さえ物件が市場に溢れでて、安価で買えるという状況はあまりないように思います。ちなみに、エクササイズ オブ パワー オブ セールの物件は「Mortgagee Sale」という表示がなされることが一般的です。ブログを書きながら、当地において過去に何件のフォークロジャーセールがあったか少し調べましたが、なんと、過去35年において1回しか記録されていませんでした。。。前出の「大半」ではなく「全て」エクササイズ オブ パワー オブ セールで売却されるようです、と訂正します。